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それにしても、この調査会の席ではたびたび出た話なんでしょうが、どこへ行きましても、昭和30年代から40年代にかけての高度成長期に人間がみんな流れ出て人口が半減したとか、第一次産業の就業者が激減し、高齢化している、後継ぎがないということを聞きました。恐らく日本の歴史において、明治の近代化どころの比ではない日本の社会変革というべきものがあの時期に起きて、地域に大変な変動がもたらされ、しかもそれがいまに続いているんだなと、これが第一に受けた印象でした。個々の問題についてはまた申し上げるとして、現在は農村を主たる対象した民俗学は成り立たなくなって都市民俗学のほうへ衣がえをするんだとかいろいろいわれておりますが、本当にそのような感じを抱きました。
今回、文化・芸術というものを素材にして地域おこしをしようとしている事例を取り上げたわけですが、すぐに結果が出てくるものではない、長期的な目で評価するということが必要だろうと思うんです。しかし、何といいましてもこういう場合には、それを担当する人の理念というか、どういうコンセプトでこれをやろうとしているのかというあたりの、しっかりした見識と熱意というものがまた大きく作用していくというあたりのことも痛感したことでした。
鈴木委員長 井上さん、今、村井さんからお話が出た、その村の人たちがどういう理念をもって村をおこそうとしているのか。先ほどお話しのように長い間調査をなさっていて、そういう意識の変化というものをお感じになりましたか。それが果たして上向きなのか、下向きなのか。
井上委員 今、村井先生のいわれたことは大変大事なことだと思うんです。地域をつくっていく場合、例えば「ふるさと創生」で1億円が来る。その1億円で何をしたらいいかと、そんな議論がどうしても先に立ってしまって、その議論の前に、自分たちの地域を一体どういう地域にしたいのか、そして孫子の代にそれをどう伝えていくのかという、地域がそれぞれよって立つ一種のアイデンティティといいますか、村井先生の言葉を借りれば「地域理念」というものを充実していくことがやはり一番基本にあってしかるべきだと思うんです。
ところが、3,200の市町村の中には、そういうしっかりしたものをもっているところが必ずしも多くないですね。そこが残念な点なんです。そういうことを確立するということは、自分の地域とほかの地域とを区別するということであって、それはすなわち、みずからの地域の個性というものを外に向かって訴えていく大事なことだろうと思うんです。しかし、まだまだそういう点においては不足している部分が多いように思います。
鈴木委員長 そのあたりの原因はどのようにお考えになりますか。

 

 

 

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